「espressione」を最初に音楽用語として使ったのは、モーツァルトなのか??
「espressione」は、「白水社 新伊和辞典」によると、
(女性名詞)
- 表現、表現法
- 語句、語法
- 表情豊かな顔つき
- (数学) 式
という意味で *1、英語でいうところの「expression」に対応する言葉だとぼくは思っています。
最近知ったのですが、この言葉は、割と新しい言葉らしく、今道友信さんの「美について」
- 作者: 今道友信
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このようにして、内的な世界の自己提示として、自己から絞り出すようにしてその感懐を物質の世界に投影するのが、芸術創作の新しい理念として登場してきた "表現" である。この "表現" に対応する言葉は、周知の通りに、古典ギリシア語や古典ラテン語にはなく、エクスプレシオ (expressio) というラテン語である。その当初の意味は果物の果汁を絞り出すという農業用語であり、意外に思う人もいるかと思うが、ゲーテの時代にも、ドイツ語ではまだ "表現" にあたるアウスドルック (Ausdruck) という言葉すらなかった。"表現" は西洋の芸術思想に関する限り、十九世紀から二十世紀にかけてはじめて美学上の市民権を獲得した現代的理念に過ぎない。*2
そうすると、当時、現代的であった「espressione」という単語を最初に音楽用語に使ったのは誰なのか?という疑問が自然に湧いてくるのですが、現時点では、モーツァルトがピアノソナタ K.310 の第 2 楽章 (Andante cantabile con espressione)
で使ったのが最初なのではないか…?と推測しています。
それにしても、、何度聴いてもいい演奏ですよね…*3。
あと不思議なことに、モーツァルトが「espressione」という単語を使ったのは、現在調べた範囲では K.310 だけのようです (※) *4。
K.310 が作曲された 1778 年夏は、モーツァルトの母アンナの亡くなった時期なんだけど、それとは関係があるのでしょうか??
そのちょっと後の世代の作曲家であるベートーヴェンが、「espressione」をしょっちゅう使ってた *5 のとは対照的です。
現時点で調べたのは、K.310 以前ではこの 5 冊
- ハイドン ピアノソナタ全集 第 2 巻 (ウィーン原典版)
- モーツァルト ピアノソナタ集 第 1 巻 (ウィーン原典版)
- モーツァルト ピアノソナタ集 第 2 巻 (ウィーン原典版)
- モーツァルト ピアノのための変奏曲集 第 1 巻 (ウィーン原典版)
- モーツァルト ピアノとヴァイオリンのためのソナタ 上巻 (ベーレンライター)
だけなので、もっと調べて信憑性を高めていかねば。
イタリア、フランスの音楽について全然調べてない (うちに楽譜がない…) ので、リサーチ不足と言われても仕方ないですね。。
メモ
(※) の主張の正否については、モーツァルトの全楽譜が公開されているわけだし、
参考:「NMA オンライン」 redhost24-001.com
時間さえかければきちんと調べることが出来るだろうけど、さすがに大変だよなあ。。
楽譜の画像情報から文字情報を検索する、みたいな技術ってないのかなぁ。